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MarkeZine Day 2025 Kansai イベントレポート: 「Web広告の最適化」を意識したマーケティングについて

by 吉田豊
こんにちは、ウマク株式会社コンサルタントの吉田です。
2025年6月5日に開催された「MarkeZine Day 2025 Kansai」に参加しました。
本イベントは、東西で活躍するマーケターが自身のノウハウや自社の事例を持ち寄り、新たなアイデアやヒントを得ようといったコンセプトのイベントでした。マーケティングの最新トレンドや実践的なノウハウが多数共有され、実際の現場での事例が提示されたりと、興味深い内容でした。
私は普段からWeb広告の運用や効果分析に携わることが多いため、特に「広告戦略の最適化」や「データ分析」といったテーマのセッションに関心を抱き、重点的に参加させていただきました。
本レポートでは、参加したセッションの内容を抜粋してご紹介します。
■session2:ファン創出のためのデータ活用戦略を徹底解析~顧客体験向上でロイヤリティとCVRを最大化~
・株式会社マクニカ 渡辺氏、池田氏
本セッションでは、データとIDを統合し、顧客一人ひとりを深く理解することの重要性と、それによって実現する高度なマーケティング施策、顧客体験の向上について、具体的なデモンストレーションを交えながら解説されました。
- 顧客理解の深化とID統合の必要性
従来の画一的なマスマーケティングから、個々の顧客に最適化されたOne to Oneマーケティングへの移行が不可欠であると指摘。「データに基づく顧客像の可視化」をメインテーマに、そのキーポイントとして「データ」と「ID」の重要性が強調されました。多くの企業で顧客IDがサービスやアプリケーションごとに分断(サイロ化)し、統合的な顧客把握が困難になっている現状に対し、「○○ID」のような統合IDの導入が解決策として提示されました。
- データとID統合による顧客体験の向上(ユースケース):
自動車用品店と旅行のデモを通じ、統合IDによって顧客の行動や嗜好を深く理解し、パーソナライズされた体験を提供する具体例が示されました。旅行前(パーソナライズされた提案)、予約時(シームレスな手続き)、旅行中(リアルタイムレコメンド)、店舗連携(質の高い接客)といった各フェーズでの顧客体験向上が解説されました。 - ID統合とデータ活用のメリット:
顧客体験向上による満足度向上、適切なタイミング・チャネルでのメッセージ配信によるマーケティング効果最大化、AIによる分析・施策精度向上、そして継続的な関係構築によるLTV向上といった多岐にわたるメリットが挙げられました。

所感:
統合IDによって顧客の行動履歴、購買履歴、嗜好データなどを横断的に把握できれば、顧客が次に何を求めているのか、どのような情報が響くのかを予測し、最適なタイミングとチャネルでアプローチすることが可能になります。これにより、顧客満足度の向上はもちろんのこと、マーケティング効果の最大化、さらにはLTV(顧客生涯価値)の向上に直結すると考えられます。AI(ChatGPTなど)の活用による分析・施策精度の向上という点も、データ活用の可能性をさらに広げるものとして注目すべきです。
顧客体験の質が企業の競争力を左右する時代において、データに基づいた顧客理解はもはや選択肢ではなく、必須の戦略であると感じました。
■session3:~なぜ今「Open Internet」なのか?広告費の最適化と分散型マーケティングとは~
・Teads Japan 今村氏、川端氏 / Kantar Japan 吉本氏
本セッションでは、「Walled Garden」に偏りがちなデジタル広告費の現状に疑問を呈し、「Open Internet」の可能性と、そこでの広告効果を最大化するための戦略について議論が交わされました。

- オープンインターネットの定義と現状:
デジタル広告の場を「Walled Garden」(メガテック企業の閉じたプラットフォーム)と「Open Internet」(ニュースサイト、アプリ等)に二分し講和を進行。生活者のメディア接触時間はオープンインターネットが長いにも関わらず、特に日本ではデジタル広告費がウォールドガーデンに80%と偏重している現状が指摘されてました。しかし、このオープンインターネットには、広告のリーチ拡大において大きなポテンシャルがあります。
- 広告評価指標の課題と「アテンション」の重要性:
従来の指標ではブランドリフト効果が見えにくいとし、新たな評価指標として広告への注目時間を示す「アテンション」(APM)の重要性を強調。アテンションと態度変容効果の相関データも示されました。

- PMPとクリエイティブの最適化、CTVへの展開:
PMPによる良質な広告枠の確保、そして「Teads Studio」による各プラットフォームに最適化された「映える」クリエイティブ制作(例:Samsung Galaxyのインタラクティブ広告)の重要性が語られました。また、TeadsのCTV領域への進出(LG等と連携したホームスクリーン広告)も紹介されました。 - 分散型マーケティングとキャンペーン効果測定:
複数メディアを組み合わせた「分散型マーケティング」の重要性と、メディア単独効果に加え「シナジー効果」も考慮した効果測定を解説。ブランドらしさの統一、メディア特性に合わせたクリエイティブ最適化(例:字幕、コンパニオンバナー)、投資対ブランド効果の最大化について具体的なアドバイスがありました。
所感:
複数メディアを組み合わせた「分散型マーケティング」と、メディア単独効果だけでなく「シナジー効果」も考慮した効果測定の重要性は、広告費の最適化を目指す上で不可欠な視点です。キャンペーンの一貫性を保ちつつ、各メディアの特性に合わせたクリエイティブの最適化を図ることで、限られた予算の中でも最大の効果を生み出すことが可能になると考えられます。
この結果、ブランドイメージが構築され、長期的な顧客エンゲージメントへと繋がっていくんだろうと感じました。
■session5:~広告費を賢く使ってしっかり儲ける!低コストで認知も獲得も両取りする『検索創出型マーケティング』~
・キーワードマーケティング 瀧沢氏
本セッションでは、広告費の高騰が進む現代において、PRと広告を効果的に連携させることで新たな検索需要を創出し、低コストで認知拡大と顧客獲得を目指す「検索創出型マーケティング」の考え方と実践方法が、具体的な事例と共に解説されました。
- 検索創出型マーケティングの定義と背景:
第三者による客観的な情報発信(PR等)で、コンバージョンに繋がる検索を創出する手法と定義。検索広告市場におけるキーワードの競争激化とCPA高騰という課題に対し、新たな検索需要喚起の重要性が示されました。

- PRと広告のうまい連携:
PR(共感・信頼を生み検索を促す)と広告(確実なメッセージ伝達)の役割を整理。PRで創出した検索需要を広告で刈り取り、PRで得た客観的評価を広告クリエイティブに活用することで相乗効果を狙うポイントが解説されました。

- 検索を増やすための具体的な6ステップ:
- 広めたいキーワードを決める: シンプルで検索されやすく、UGCで自然発生するような、他社権利のない言葉を選ぶ(例:「リビング仏壇」)。
- タッチポイントの洗い出し: オンライン・オフライン問わず全顧客接点を把握。
- アプローチ先の分類整理: 自社、有料メディア、アーンドメディア等に分類。
- PR・広告施策の実行: PRで客観的情報発信、広告で検索ユーザー獲得。
- 効果測定と改善: インプレッション、検索数、流入数、CV数等を測定しPDCA(特に「指名検索数の増加」が重要KPI)。
- 体制構築: 社内連携体制の構築、外部専門家の活用。
- 事例紹介(お仏壇のはせがわ様):
「リビングコレクション」の認知度向上を目指し、「リビング仏壇」という新キーワードを創出。PR活動の結果、メディア掲載多数、「リビング仏壇」での検索数・インプレッションが急増し、EC売上にも貢献。低予算でマス広告に匹敵する効果を得た事例が紹介されました。
所感:
検索創出型マーケティングは、広告費を抑えつつ認知拡大と顧客獲得を両立できる可能性を秘めていることを理解しました。PRと広告の連携による検索行動の喚起と確実な刈り取り、そして体系的なステップの実行が成功の鍵であると改めて感じました。
「指名検索数の増加」を重要なKPIとする点も、ブランドへの関心度や認知度を高める上で理にかなっており、長期的な顧客育成にも繋がる重要な視点だと考えます。
最後に:
以上、MarkeZine Day 2025 Kansaiのセッションのレポートでした。
本イベントを通して、私自身こういったイベントに初めて参加し、普段の業務では聞きなじみのないことや、新たな視点を学ぶことができたかなと思います。
限られた予算の中で「Web広告の最適化」を実施するには広告の内容やクリエイティブに目が行きがちですが、それ以外の角度からのアプローチもとても重要であるということを改めて感じました。
例えば、今回取り上げられたAIの活用や、重要指標の発見、そしてPRによる検索語句の創造などのように、単にWeb広告を運用するだけでなく、「Web広告」に「何か」を掛け合わせることで、より大きな相乗効果を生み出すことのできるものだと思います。この中でも、私が今すぐ実践できるものについては、重要指標の発見で「データ分析」をする上で既存の顧客データをさらに深く掘り下げ、隠れたニーズや行動パターンを特定することから始めることが重要だと考えています。
この「Web広告」×「何か」という視点を持つことで、企業様のWebマーケティング課題に対し、単になる運用に留まらないような視点と、AIなども兼ね備えた、新たなマーケティング手法を企業様のビジネス課題と照らし合わせた最適解を今後も支援できればと思います。