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愛される私鉄ローカル線「水間鉄道」のマーケティングと理念とは?

水間鉄道株式会社
水間鉄道株式会社(みずまてつどう)は、大阪府貝塚市を中心に鉄道事業およびバス事業を運営している会社です。そんな水間鉄道が様々な企画と仕掛けを実行実現してきました。主力サービスである「オリジナルヘッドマーク」はウマクも賛同することになりましたが、私鉄ローカル線が様々な企画を立ち上げ、それを実行できるフットワークが生まれる背景や想いを、水間鉄道株式会社の事業企画部 天野・ジャック・隆之様へウマク代表の清水がインタビューしました。

御社について簡単にお伺いできますでしょうか

天野:弊社は1924年(大正13年)4月17日に水間鉄道株式会社を設立いたしまして、翌年14年12月24日に水間鉄道が開業いたしました。よって2024年で会社設立100周年ということになります。


1934年(昭和9年)1月20日に「貝塚駅」-「貝塚南駅」の営業開始となり、これによって南海電鉄(当時は南海鉄道)貝塚駅との接続ができ現在の始発終点「貝塚駅」⇔「水間観音駅」になっています。

終着駅の水間観音駅は当時としては珍しい鉄筋コンクリート造りの駅舎で、有形文化財に指定されおり、水間観音駅の最寄り駅である水間寺をイメージした塔婆風のデザインの駅です。なぜなら水間鉄道は水間寺にお参りするために作られた参詣鉄道だからですね。

(左)参詣鉄道らしい寺をイメージした貝塚駅 
(右)有形文化財に指定されている水間観音駅

清水:ありがとうございます。100周年おめでとうございます。歴史がありますね。

天野:そして2006年に外食チェーンの株式会社グルメ杵屋が親会社となり、新生会社として再出発しています。なぜ外食チェーンなのか?というと、株式会社グルメ杵屋の先代社長である椋本彦之が戦時中に、弊社の駅でいう石才駅付近で疎開したそうで、その縁を大事にしたく支援をするきっかけになったようです。

清水:外食チェーンの小会社に鉄道会社があるというのが、面白いですね。なにか事業シナジーはあるのでしょうか?

天野:現在は路線にうどん屋があるわけでもなく、特に目立ったものはありませんが、やはり本件に係る企画の意思決定をするうえでの「理念」は関係していると思います。

水間鉄道の企画・仕掛けとは?

清水:そうなんですね。ではまず水間鉄道が実施された企画の一部を紹介いただけますか?

天野:代表的な企画としては、ウマク様も実施いただきました車両に装着するヘッドマーク、副標をオリジナルで作ったものをご利用いただけます。利用シーンとしてはお誕生日、結婚記念日、お店の周年祝い、企業PR、最近では推し活でもご活用いただいていて、同時に水間鉄道のX(旧Twitter)でも併せて紹介する事により、水間鉄道も一緒にPRします。

※ウマク株式会社のヘッドマークとして、2024年1/13~2/12まで運行した

清水:これはインパクトがありました。乗車される方はもちろんのこと、ちゃんと水間鉄道のSNSで発信もしてくれるので鉄道ファンはもちろんのこと、利用される地元民の方へのPRにもなりました。
そして運行終了後、このヘッドマークもプレゼントしてくれるので、嬉しかったですね。弊社のエントランスに飾りたいと思います笑

天野:続いては2020年10月より、コロナ禍において「パンデミックになりにくいようなイベントを」と思案し「運転体験」企画を開始。お子さまを対象とした「子ども運転体験」も実施し、300件以上の応募がくるほどになっています。

(左)「運転体験」の様子
(右)デジタルアートフェス in 水間観音

昨年は貝塚市の新たな観光の目玉になるように、水間鉄道の根幹である観光スポットである水間寺に光をあて、新たな観光地を目指していきたい想いで水間寺を約1ヶ月間、アートイベントとしてプロジェクションマッピングで投影しました。

また、クラウドファンディングで実現した水間鉄道を舞台の松平健さん主演のドラマ「アワーホーム」が公開されたり、Youtuberの方を1日社長に迎え、当日に限り運賃を無料にして、各ローカル鉄道各社18社と連携し、グッズ販売会も兼ねたイベントを実施しました。
Youtuberコラボイベントは常に内容をアップデートしながら実施しておりまして、昨年は約4000人ご来場いただきました。

(中)ドラマ「アワーホーム」
(右)当時のYoutuberイベント

「まず走れ 走りながら考えます 考えながら走ります」

清水:お取り組みを紹介いただき、ありがとうございました!
最後のお寺をプロジェクションマッピングでみせるアートイベントを鉄道会社が企画実行してる、のがすごいな、と感じます。
他の企画もそうですが、言うは易く行うは難し、で鉄道会社がなかなか柔軟に実行に移せない企画もあるのかな、と思うのですが、なぜそこまでカジュアルに企画が通り実行される鉄道会社なのですか?

天野:これはまさに杵屋グループのモットーでもあるのですが、「まず走れ 走りながら考えます 考えながら走ります」という言葉があります。水間鉄道という小さな会社だからこそ、このモットーを土台にフットワークを軽くしていきたいと考えています。

※株式会社グルメ杵屋の経営理念より引用(2024年4月時点)

清水:とても共感します。弊社名の由来も「ウマクいく」を実現するには石橋を叩いて渡らないといけないようにも捉える人がいるのですが、むしろ逆だと感じます。「ウマクいく為にはすぐ実行&変化」なので、響きました。

天野:ありがとうございます。また水間鉄道としては、実行したらそれを発信することも拘っています。
先ほど紹介した「運転体験」も初期はそこまで集客はよくなったのですが、夕方のニュース番組で、ご紹介いただいた以降、反響があり発信することの影響を知り、あらためまして水間鉄道としてはWEBコンテンツ・SNSなどで、発信をきちんとしていこうと方針をもって運営しています。
Xのフォロワー数の推移も分析をしていて5000を超えたあたりから企業様からの問い合わせも増えてきました。

清水:駅員さんがXのフォロワー数の推移をみて分析しているのが、素敵ですね! 最後にそんな水間鉄道様としてのマーケティング戦略を描くうえで大事にしていることはなんでしょうか?

天野:水間鉄道はお客様との一方的な関係ではなく、お客様と対等に接しながら、お客様をリスペクトして、できればお客様からもリスペクトいただけるような、そんなサービスを実現しようというのが、グループ理念で掲げております。


天野:レストランでも調理されたシェフが、お客様に直接お礼申し上げるシーンがあるかと思います。その時はお客様もリスペクトをもって感謝頂いていることが多いかと思うのですが、鉄道会社としてはそのような形をまだまだ模索中ではありますが実現していきたいですね。

清水:このビジョンはマーケティングでも通用するお話だと思っていて、デジタルマーケティングもユーザーへ一方的なコミュニケーションではなく、対等な関係性を構築していくことは昨今非常に大事です。

より一層、噛み締めて乗車させていただきます!この度はありがとうございました!

※オリジナルヘッドマークの装着について詳しくはバナーにてご確認ください。

ウマクでは、本質的なマーケティング課題と組織的課題に向き合い「人」に寄り添った伴走型のコンサルティングを心がけています。カジュアルに無料相談して頂けるとウマク支援します。